久しぶりに一気に読めた良著
以前にも書きましたが、ボクが著書を選ぶ時のキーワードは「倒産」や「どん底」などです。前回はどん底から復活を遂げたセンベイブラザーズの著書を読みました。
本来であれば成功者から学び、それを実践し自分も成功できればと考えてはいるけれど現実は厳しく本のようにはいかない。まぁそれも自分の努力不足だったり能力の限界というのもあるのは重々承知しているのですが・・・。
いつもすれすれの経営をしている自分にとって、今回はハッピーエンドの結末ではないからこそ学びが多いのではないかと思い購入しました。
読んでみるとプロの作家が書いたものではない語り口が身近に感じ、同じように苦しい経営をしているからこそ共感もできたせいもあり、買ったその日のうちに読了した。
倒産の原因は本の内容を咀嚼すると「大手の出店や人口減少による売上げ減少」「先代からの負の遺産(借金)」に加え最後のとどめになったのが「情報漏洩による信用不安」なんだと思う。経済が縮小している現在、より大きな資本力を持つものが生き残る
著書の大半に割かれているのが、小林社長の生い立ちや企業としての地域貢献への取り組みだ。この部分がAmazonのレビューでは酷評している人もいるようだがここに社長の人となりや生き様が分かる大切な部分だと感じた。
ボク自身は倒産の原因や教訓を知りたいというよりは、社長自身が「どのような形で会社を終わらせたいか」という”思い”の部分だった。
結果的には僅かながらも黒字化を達成し”まだまだやる気満々”のところに青天の霹靂が訪れたかたちで終わりを迎えた。
でも、小林社長は薄々気づいていたのではないか?いずれは破綻することを。
黒字化されたと言ってもたった1期。そして27億の売上げに対して16億の負債。今後も売上が減少することを考慮すれば利息を払いながら返済をしていくことは到底できなかったはず。自分が死ぬまで銀行にリスケを続けさて存続していく方法もあるのかもしれないが、社長の死後も借金は残りそれを引き継ぐものもいないだろう。
そのような長期のビジョンを小林社長はどのように考えていたのだろうか。
自己破産は世間へのけじめになるのか
ボクの知人のコンサルタントは言う「殆どのケースは自己破産する必要がない」と。
理由は借金には時効があり、全ての借金は担保の献上と5年という時間で消滅するということだ。じゃあ何のために自己破産っていう制度があるのか?
ボクなりに考えてみたけど2つしか思い浮かばなかった。それは時を待たずして借金を清算できること。もうひとつは自己破産をすれば債権者が「まぁしょうがねーな」って思ってくれることくらいだろうか。
でもね自己破産も時効の援用も「借金を踏み倒す」という意味合いでは全く同じだと思うんですよね。
自己破産のほうは負債額にもよるが、弁護士費用が数百万からかかってくるし弁済も従業員の給料が最優先されるとはいえ、担保を取っている金融機関が圧倒的に回収が有利だろう。今回はクリスマスケーキを予約したお客さんまでもが債権者となってしまった。債務者側からすればこのような弱者から返済をしていきたいはずなのだが自己破産を選択してしまった為にそれが叶わないのだ。
また、弁護士費用も友人知人からカンパしてもらったわけで言い方が悪いかもしれないけどすごく迷惑をかけちゃってるわけだ。
ただこれは小林社長の今までの地域貢献や個人的に恩義を感じている方の善意であり、普通はなかなこうはならないと思うんですね。このあたりは小林社長の損得勘定を抜きにした生き方を貫いてきた良い意味での結果なんだと思います。
ですが、普通の倒産社長が自己破産をしたら親戚縁者に泣きついて工面するしかありません。借金で苦しんでその借金を無いものとするために一番大切な人が新たな債権者になってしまう・・・本末転倒な気がします。
時効の援用は卑怯者がする行為なのか
きっと自己破産という公開処刑をうければ世間は納得してくれるのでしょう。
でも、時効の援用をすることで数百万もする弁護士費用をより経済的に弱い債権者を優先に返済できたのではないか?たった99万円のお金しか家族に残せないなんて・・・もし子供が小さかったらそれこそ彼が一番の弱者ではないか。
自己破産はある意味切腹みたいなもので生き方としてけじめを取ってる感じがするし、債務者本人も腑に落ちるのかもしれない。
でも「借金は払えない」という結果は同じなのに、自己破産によって喜ぶのは経済的強者である金融機関と弁護士が喜ぶだけなんじゃないかと思ってしまう。
一方時効の援用はまだ体力のあるうちに決断すれば自分が大切にしたい人から返済を進められるのではないか?切腹せずにタイムアップを待つことは本当に卑怯者のすることなのだろうか?
自分自身の中でも答えが見つからない。
しかし、やまとは自己破産したからこそその後に支援してくれる人がいたり労いのことばをかけてくれた人がいたのではないか。それで少なからず社長の心が救われたことは紛れもない事実だ。
もし小林社長が時効の援用を選択していたら「逃げた」というレッテルを貼られ、心が救われることはなかったのだろうか。でも返済するべき人に返済もでき、弁護士費用として新たに借金をする必要がなかったのではないか。
まとめ
結局答えが見つからない・・・
ボクも破綻してしまう可能性は十分にある。その時にどっちの選択をするべきなのか真剣に考える必要がある。借金問題は最後は生き方の問題だ。
小林社長は当然破綻は不本意だったどろうけど、終わり方をどのように考えていたを知りたい。もしかして時効の援用をすすめてくれるような人がいなかったのかもしれない。
ちょっと普通とは違った観点での書評になってしまいました。面白く読ませてもらったけど自分の中ではモヤモヤする気持ちになった1冊でした。
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